最高裁判所第三小法廷 昭和38(オ)70 判決
主 文
原判決中、原判示請求原因(一)の準消費貸借(昭和三元年五月二四日
成立)および同(二)の消費貸借(同三二年六月二〇日成立)に関する部分の上告
を棄却する。
原判決中、同(三)の消費貸借(同三三年一二月二五日成立)および同
(四)の消費貸借(同三四年一月二九日成立)に関する部分を破棄する。
上告人は、被上告人に対し、金二九七、八七五円、および内金二四七、
八七五円に対する昭和三四年五月二日から完済まで年三割六分の割合による金員、
内金五〇、〇〇〇円に対する同年一一月七日から完済ま
で年四割の割合による金員の支払をせよ。
被上告人の前記(三)(四)の各消費貸借に関するその余の請求を棄却
する。
訴訟費用中、第一項の部分に関する上告費用は上告人の負担とし、その
余の部分に関する訴訟の総費用はこれを六分し、その五を上告人、その一を被上告
人の負担とする。
理 由
上告人の上告理由について。
原審の確定するところによれば、原判示請求原因(一)の準消費貸借および同(
二)の消費貸借は原判示の経緯により成立したというのであり、原審の右認定は挙
示の証拠により是認できる。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨
判断、事実の認定を非難するに帰し、原判決に所論の違法は存しないから、採用で
きない。なお、論旨三の主張は原審においてなされていないだけでなく、債務者の
窮迫につけこみ契約が締結され右契約が暴利行為に該当する等右契約を無効ならし
める事実については、原審の認定しないところであるから、この点に関する論旨も
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採用できない。
ところで、原審は原判示請求原因(三)(四)の消費貸借における制限超過の利
息および遅延損害金の元本充当についていわゆる消極説を採用しているが、当裁判
所は、この点については、当裁判所昭和三五年(オ)第一一五一号同三九年一一月
一八日大法廷判決の示した見解を正当と考える。よつて、これと異なる見解に立ち
残存元本等の認定判断をした原判決中前記部分は違法であつて、破棄を免れない。
しかしながら、原審は上告人が本件債務の弁済として被上告人に交付した金額およ
びその日時を確定しているので、右事実に基づき前記大法廷判決の見解に従い弁済
の充当関係について判断すれば、上告人は、前記(三)の消費貸借につき残存元本
二四七、八七五円とこれに対する昭和三四年四月九日から弁済期たる同年五月一日
まで年一割八分の割合による利息および同月二日から完済まで年三割六分の割合に
よる遅延損害金と、同(四)の消費貸借につき五〇、〇〇〇円とこれに対する同年
一一月七日から完済まで年四割の割合による遅延損害金の支払をする義務がある。
しかるところ、被上告人は前記(三)の消費貸借については残存元本とこれに対す
る弁済期の翌日からの遅延損害金の支払を求めるのみで利息の支払を求めるもので
ないことは記録に徴し明らかであるから、結局、被上告人の前記(三)(四)の各
消費貸借についての本訴請求は、主文第三項の範囲において理由があり、その余は
理由がないこととなる。
以上のとおりであるから、原判決中前記(三)(四)の各消費貸借に関する部分
を破棄し、右部分に関する請求については前記のとおり当裁判所において判決をす
るに熟するから民訴法四〇八条により主文第三項第四項のとおり判決し、その余の
部分についての上告は理由がないので同法三九六条三八四条に従いこれを棄却する。
よつて、訴訟費用について同法八九条九二条九六条に従い、原判決を破棄する部
分について裁判官横田正俊の反対意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のと
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おり判決する。
裁判官横田正俊の反対意見は、つぎのとおりである。
私は、債務者が利息制限法所定の制限を超過する約定の利息又は損害金を任意に
支払つたときは、その超過部分の返還を請求することをえないばかりでなく、その
超過部分につき民法四九一条による法定充当も行われないと解するのが相当である
と考える。したがつて、原審が原判示請求原因(三)(四)の各消費貸借の弁済関
係について確定した原判示の事実に基づき、同法所定の制限を超過する約定の利息
損害金は当然に残存元本に充当されるものではないと解し弁済の充当関係について
認定判断したのは正当であり、原判決になんら違法は存しない。よつて前記(三)
(四)の各消費貸借に関する部分についても、本件上告を棄却すべきものと考える。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 柏 原 語 六
裁判官 石 坂 修 一
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
裁判官 横 田 正 俊
裁判官 田 中 二 郎
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